【Workshop Report】 Craftivismワークショップの報告

【Workshop Report】 Craftivismワークショップの報告

This Workshop is one of DESIAP’s “Women’s leadership in designing social innovation: mutual learning in the Asia Pacific” program by Sae Shimizu.
(English translation in progress)

ワークショップ風景

本稿では、先日開催したワークショップについて、その内容と評価をレポートします。

参加者・Participant
清水冴, Sae Shimizu(企画者, Planner)
津田道子さん, Michiko Tsuda(メンター, Mentor)
菊地裕子さん, Yuko Kikuchi(指導教官, Mentor)
中森あかねさん, Akane Nakamori(メンター, Mentor)
今西泰赳さん, Hirotake Imanishi(アドバイザリーボード, AB)
Sさん, Ms. S(女性、モンゴル語-中国語、修士課程、工芸科染織コース, Female, Mongolian-Chinese, Master’s Program, Dyeing Course, Department of Crafts)
Dさん, Mr. D(イギリス人、教員、社会学者-犯罪学, British, teacher, sociologist – criminology)
Rさん, Mr.R(男性、修士課程、油絵科, Male, Master course, Oil Painting)
Fさん, Ms. F(女性、修士課程、SCAPe, Female, Master course, SCAPe)
Mさん, Ms. M(女性、博士課程、彫刻科, Female, Ph.D., Sculpture)

手順
1.ワークショップ概要の説明, Workshop Summary

企画者は、今回のワークショップの背景にある考え方として、ジェンダー、人種、階級などのギャップを埋めるインターセクショナルなアプローチを採用し、「美術史」を捉え直すことを目的とした自身の修士研究の実践的な活動として、Craftivismに関心があることを説明しました。手芸と美術についての国内外の主要な文献を紹介しながら、このワークショップでは「刺繡=女性の趣味の工芸品」という美術史的問題に取り組むため、刺繍を扱ってジェンダーを含むアイデンティティの共通の問題を探求していくことを共有しました。

The organizer explained that the idea behind the workshop was to adopt an intersectional approach that bridges the gap between gender, race, and class and that she was interested in Craftivism as a practical activity of her own master’s research aimed at rethinking “art history”.
While introducing key national and international literature on crafts and art, she shared that this workshop will explore common issues of identity, including gender, by dealing with embroidery in order to address the art historical issue of “embroidery = women’s hobby craft”.

2.刺繍とお喋り, Embroidery and talking

各参加者には、針と刺繡枠が与えられ、好みに応じて色の糸や言語を自由に選択することができます。参加者は自分の名前を刺繍し、順番にその名前に関連する物語について話すことが求められます。

Each participant is given a needle and an embroidery frame and is free to choose the color thread and language of their choice. Each participant is asked to embroider his or her name and in turn, tell a story related to that name.

3.お喋りとインターセクショナルな問題との接続, Connecting talk and intersectoral problems

企画者から順に、自分の名前に関連した物語/逸話を話しました。名の命名と意味の裏話、アイデンティティに関連して異なる言語での2つの名前の話、外国での名前の発音の問題、他者からの自分の名前への反応、サイン(判子)を巡る話、階級や性別の話などがありました。それぞれの個人的な経験から、社会における不平等な問題が垣間見えました。例えば、「夫婦同姓」が現行される日本の民法の下で離婚した場合、姓を簡単に変更できません。ほとんどの場合、女性がその負担を受けることになり、公の場で、女性は屈辱と追放が受けることがあります。物語の全体を見ると、いくつかの興味深い共通点があり、各物語には、ジェンダー、階級、人種問題と何らかの関係がある個人的および社会的問題が、新たな交差性によって結び付けられました。

Participants took turns telling stories/anecdotes related to their names.
There were stories behind the naming and meaning of names, stories of two names in different languages in relation to identity, problems with pronunciation of names in foreign countries, reactions to one’s name from others, stories surrounding signatures (Hanko stamp), class and gender.
Each personal experience provided a glimpse of unequal issues in society. For example, under Japan’s civil law, which currently allows “married couples to use the same family name,” divorced couples cannot easily change their family name. In most cases, the woman is left to bear the brunt of the burden, and in public, she may suffer humiliation and ostracization. Looking at the stories as a whole, there are some interesting commonalities, and each story is tied together by a new intersectionality of personal and social issues that have some relationship to gender, class, and race issues.


評価
うまくいったこと

・参加者の選択
 1回目の開催ということで、参加者は、ジェンダー、人種、美大での専攻、話しやすいかどうかを意識して募集しました。企画者以外は初対面だという人も多かったが、結果的にお喋りがスムーズに進んだのは参加者の相対的なバランスが良かったと言えます。

・「名前」を刺繍するということ
 参加者はワークショップに向けて何かを準備することなく気軽に参加でき、また「名前」は身近なもので、全員に何らかの物語があります。そして必ず個人的な話題になり、それを他者と共有する、あるいはカミングアウトし合うことで、自然に信頼感が生まれました。他者の名前の物語を聞くことは、自己紹介とは違って、相手への関心が強く向けられるようです。

・コラボレーションと連帯感の構築
 私たちが一緒に何かを作るという設定は、他の人のことをよく知らなくても、自然に目的とのコラボレーションの精神を作り、連帯感、信頼感のある空間を作り出すことがわかりました。

・手を動かしお喋りする
 刺繡/手仕事は、自分の内面を考えて話している間、手の動きに集中することができ、良いツールであることがわかりました。刺繍と思考のゆっくりとしたリズムがマッチします。参加者は自分の手を見ていて、他の人の目や反応を見る必要がないので、自分自身についてより快適に話すことができます。手を動かしているとき、沈黙は違和感を感じさせません。刺繍をしているので、相手の目を見て話す/聞かなければならないような、プレッシャーを感じなくて良いです。そうすることで、自然に作られる、教員/学生、年上/年下、男性/女性といった特権性が崩れ、フラットな繋がりの中でワークショップを進めることができました。

・刺繡における刺激的で魅惑的な要素
 参加者は、2時間経っても刺繡をやめたくありませんでした。刺繡には、注目と興味を引く何かがあります。

ワークショップ風景
何が良くなったのか

・準備時間の不足
 企画者が最初に紹介した手芸と美術の学問的な文脈は、すべての参加者がすぐに理解することは難しかったように感じます。例えば、主要文献を参加者が事前に共有して読むことができたとしたら、相互作用と結果はより焦点を絞った洞察に満ちたものになったと考えられます。

・要約時間と批評ができなかった
 交差する興味深い話はたくさんありましたが、「交差性」の焦点を絞った批判的な議論にさらに発展する時間はありませんでした。

・司会はなくて良い
 司会者の権威性を考慮すると、参加者は話し終えると自ら「では次のあなた、どうぞ」と振る方が良いと気付きました。話し手が満足したタイミングで次の人にバトンタッチできるよう、ワークショップの始めに順番の進め方を予め伝えておきたいと思いました。

・刺繍と物語の関連性を引き出す
 ワークショップ後、Fさんは「お母さんの字を真似した。お母さんが大好きなので」と教えてくれました。参加者は、刺繍のデザインと自分の物語を、意識的であれ無意識的であれ、反映させていたと考えられます。参加者の中には、刺繍をしているのがもう一つの名前だったり、判子のデザインだったり、自分の話す物語と繋げている人もいたので、他の参加者からも引き出してみても良かったと思いました。

今後の課題

・アートワークとして展開していく
 今回のワークショップの記録である、録音、録画、スチール写真、名前が刺繍された布から、アートワークとして発表できる形にしていきます。

・2回目の開催
 DESIAPに参加しているEbRuのメンバーと東京での開催を検討しています。