[“Kogei” in China-2] 中国の現代陶芸事情と現状に対する見解

[“Kogei” in China-2] 中国の現代陶芸事情と現状に対する見解

陳 恂浪/Chen Xunlang

2022年5月21日

 前述のように、中国における現代陶芸の発展は、中国の美術大学が押し進める現代陶芸教育と切り離せない。現代陶芸は、80年代の台頭から現在に至るまで、伝統陶芸や製品デザインとは一線を画し、中国陶芸の一部として活気に満ちていることは確かであるが、国内にはそもそも中国現代陶芸の変遷について網羅的に記した文献はなく、80年代以降の情報は断片化されている。中国の現代陶芸の発展には、例えば20世紀初頭のパブロ・ピカソ(Pablo Piccaso、1881-1973)をはじめとする陶芸創作の擁護者や、40年代に生まれたアメリカの現代陶芸運動である「西海岸クレイ運動」の提唱者ピーター・ヴォーコス(Peter Voulkos、1924-2002)など欧米の現代陶芸思想の影響が強い。そこで筆者は「中国の現代陶芸事情」について記す前に、中国陶芸研究の権威である周光真の『当代陶艺鉴赏与收藏』(『近現代陶芸鑑賞とコレクション』2010年)などを参照しながら、80年代半ば以降から2010年代初頭までの変遷を辿ってみたい。本稿では筆者独自の視点として、中国現代陶芸の発展において象徴的な出来事である「現代陶芸教育の始まりと芸術家集団の台頭」、「展覧会と学術的交流」、「文献の出版」の3つに焦点を当て年表的に整理していく。

周光真『近現代陶芸鑑賞とコレクション』[1]

周光真『近現代陶芸鑑賞とコレクション』[1]

中国の現代陶芸事情

現代陶芸教育の始まりと芸術家集団の台頭

 1984年の浙江美術学院を筆頭に、中国各地の美術大学の陶芸科では、後に中国現代陶芸の発展において中心的な役割を担うようになる現代陶芸の授業の導入が進んだ。また、欧米の美術教育を受けて帰国した現代陶芸家たちによって、制作や販売、教育普及を目的とした芸術家集団が作られた。

 1984年:浙江美術学院(現在中国美術学院)工芸専攻陶芸コースの教員である陳淞賢が、国内初となる「現代陶芸」の授業を開設した。

 1990年:湖北美術学院の教員である李正文は、国連開発プログラム陶芸顧問の李茂宗を誘い、「第1回湖北陶芸講演会」を共同で開催した。李の陶芸作品は当時の若い陶芸家たちに影響し、講義で紹介した海外からの現代陶芸に関する情報は、保守的な中国陶芸界に大きな衝撃を与えた。  

「吾土純形」 李茂宗台湾巡回展 2017.1-2018.1[2]
李茂宗  「Internal Nature Series-Blue Star(16)」 2000年[3]

 2000年:国内の主要な美術大学である西安美術学院、魯迅美術学院にも「陶芸スタジオ」が設立された。

 2001年7月:海外の陶芸家のアーティスト・イン・レジデンスを伴う「富楽国際陶芸創作イベント」が北京楽陶苑と西安富平陶芸村で開催された。国内外の現代陶芸作家を中心とした交流は初めての試みであったり、中国の現代陶芸の領域における国際化は2000年代から始まったと言える。

 2004年:中国の陶芸教育推進者である許以祺と徐都峰は、陶芸の国際化の窓口の役割を担う施設として、陝西省富平県に「国際陶芸博物館」及び「国際陶芸文献センター」を設立した。世界各国から芸術家を誘致したり、アーティスト・イン・レジデンスや国際交流展の開催したり、教育普及をする拠点としては、国内で最も規模の大きい施設となっている。  

(左)陝西省富平県国際陶芸博物館[4] 
(右)博物館陳列スペース[5]

 2005年:欧米の美術教育を受けた陶芸家の鄭は、景徳鎮彫刻磁器工場に「景徳鎮楽天陶社」を設立。「楽天陶社」は、以前は「香港楽天陶社」(1985年)、「上海楽天陶社」(2002)を開設してきたが、景徳鎮はその中でも特に国内の現代陶芸の発展に寄与した。当初、鄭は「景徳鎮楽天陶社」を自身のアトリエとして開設したが、現在は学術交流、陶芸教育、作品販売など幅広く運営する陶芸センターになっており、景徳鎮における現代陶芸普及の拠点となっている。ここでは毎週金曜日の夜に陶芸講義と、土曜日の「楽天陶芸市場」が定期的に開催されている。(コロナによって一時的に中断) 

景徳鎮楽天陶社アトリエ[6]

 2008年:景徳鎮彫刻磁器工場に、中国初の現代陶芸グループ「冰公社」が設立された。メンバーには周、安鋭勇、干道甫など9人がいる。中国伝統陶芸の技法を、現代陶芸の制作に応用するのが評価されている。(安は釉薬を専攻し、干は染付を専攻していた)

「方青」[7]         安鋭勇 「非有想系列―水骨1」 2008年[8]
干道甫 「青花天宝」 2011年[9]

展覧会と学術的交流

 中国の現代陶芸教育が始まった1984年、国内では初めて「現代陶芸」の名を冠する展覧会が開催された。以来、大学や美術館などの研究機関を中心に展覧会や講演会が次々と開催され、海外の機関と交流しながら、中国における現代陶芸を模索したり、アピールしたりしてきた。

 1984年7月:当時の中国陶磁器は伝統的な陶磁器が主流であった。そのうちの一つである「石湾」という陶磁器産地に拠点を置く陶芸家の梅文鼎は、国内初となる現代陶芸を展覧会名に掲げた「梅文鼎・曽力・曽鵬――石湾現代陶器展」(広東民間美術館)を開催した。その後は香港アートセンター、北京中国美術館、広東佛山青少年文化宮に巡回したが、現代陶芸の最初の展覧会が梅文鼎によって、しかも「石湾」という伝統陶芸の地で成功を納めたことは全国に衝撃的を与えた。(胡、徐、刘、李,2017.10)出展された作品を見ると、伝統的な陶磁器を引き継ぐ傾向があるが、「現代陶芸」を問題提起した点では歴史的な先例であり、「石湾現代陶器展」は、中国現代陶芸の象徴的な起点となった。

梅文鼎「色的」1993年[10]

 1985年:中華陶芸開発研究センターは、湖北省荆春岚矶で「第1回全国陶芸家ワークショップ」を開催した。ワークショップのテーマは「現代陶芸の定義」であり、「現代陶芸」とは何か、現代陶芸をどうやって発展するのか、という問題について議論がなされたという記録が残っており、人々の関心が向けられ始めたと言える。

 1988年11月:「中国伝統陶芸と現代陶芸講演会」(香港文化センター)が開催され、その講演会に関連する展覧会には、中国と海外の陶芸家の作品が展示された。(,1989.3)著者の記述によると、それは伝統的な陶芸と現代の陶芸を二重のテーマにした展覧会で、伝統的な陶芸作品は主に中国の陶芸家が出品し、現代陶芸作品は主に西洋の陶芸家が出品した。当時、「現代陶芸」という領域に人々は注目していたが、未だ創作ブームを国内では形成していなかった。

 1989年:85美術運動が先導し、中国における最初の総合的な現代美術展「89中国当代美展(89中国現代美術展)」(中国美術館)が開催され、全国から作品297点が展示された。本展には、孫保国の《口・鼻・歯・瓶》と黄雅莉の陶芸系の作品が出展されたという記録が残っている。 (武,2014.7)

 1995年8月:「景德高岭国会(景徳鎮カオリン国際陶芸講演会)」(景徳鎮陶磁学院)が開催された。 (先,1995.3)この講演会には、景徳鎮産磁土の主成分である「カオリン」に関心を持った世界各国の陶芸関係者が参加し、地元の陶芸関係者と学術交流を行ったという点において、景徳鎮の現代陶芸の発展に重要な役割を担った。

 1996年1月:中国現代陶芸の国際化の第一歩として、中国文化部主催の「陶瓷的国度――中国当代陶欧洲巡回展(陶磁器の国――中国現代陶芸ヨーロッパ巡回展)」の内覧会が中央美術学院展示ホールで開催され、その後はヨーロッパに巡回展が行われた。

 1997年:現在、中国の最も著名な現代陶芸家の1人である左正は、広州省・石湾窯と、佛山陶磁を拠点に活動し、広東美術館で「感受泥性(土を感じる)」、「超越泥性(土を超える)」、「演泥性(土を演じる)」、「单纯(シンプルな空間)」などの一連の現代陶芸展を開催した。(左,1999.3)  

「感受泥性(土を感じる)」展示情報[11]    左正简牍」 2019[12]

 1998年5月:羅小平、李見深、ウェイン・ヒグビィ(Wayne Higby、アメリカアルフレッドセラミック陶磁大学教授)などの陶芸家と、宜興市政府および宜興陶芸業界の関係者などの努力により、「宜兴国展(宜興国際陶芸セミナー兼展覧会)」が開催された 。(,1999.2)それ以降、宜興国際陶芸展シリーズは年々続いてきた。

 

 1998年11月:「首届中国当代青年陶家作品双年展(第1回中国現代若手陶芸家ビエンナーレ)」が浙江省杭州の中国美術学院展示ホールで開かれた。学院派(大学機関で陶芸教育を受けた人々)をルーツとする「中国現代若手陶芸家ビエンナーレ」 は、国内では数少ない定期的に開催される芸術祭のひとつとして、中国の現代陶芸の発展に関する資料を残し、国内の現代陶芸研究に大きく貢献している。 (,2019.6)  

第12回中国現代若手陶芸家ビエンナーレ[13]      展示風景 中国美術学院民芸博物館 2021.8.8-9.20[14]

 2000年:中国の現代陶芸に関する展覧会はますます増加する傾向にあった。海外では、1998年に在米中国人によって、カリフォルニアを拠点に「美国中陶瓷学会(アメリカ中華陶磁協会)」が設立された。以来、米中の陶芸交流を図ってきた当協会は、「美国陶瓷艺术教育学会(アメリカ陶芸教育協会)」と協力し「中当代陶展――2000年丹佛(中国現代陶芸展・2000デンバー)」(デンバー・インディゴスギャラリー)を開催した。中国本土、台湾、香港、アメリカ在住中国人陶芸家の作品40点以上が展示された。

 中国国内では、現代陶芸の大規模な展覧会である「(中国当代陶交流展)中国現代陶芸学術交流展」が、香港視覚芸術センターと広東美術館に巡回して開かれた。また、大学主催の展覧会として、景徳鎮陶磁学院は、現代陶芸の中でも「磁器」をテーマにした「国陶瓷艺术会――瓷的精神(国際陶磁芸術講演会・磁器の精神)」作品交流展、清華大学美術学院は中国美術館で「清大学2000年国交流展(2000年国際陶芸交流展)」を開催し、国内に影響力を与えた。(陶,2000.6)

 2002年9月:ジュネーブのアリナ美術館に「当今中国陶展:印与当代(今日の中国陶芸展:印と現代)」が開かれ、その後、デンマーク陶芸美術館、デルフィア陶芸アトリエ、セントルイス・ワシントン大学、オレンジカウンティ現代美術センターを巡回した。本展はタイトル通り、同時代の中国現代陶芸を海外に紹介した。

 2003年:ノルウェー・オスロで「超越传统――中国当代陶展(伝統を超え・中国現代陶芸展)」が開催された。李見深、張温帙、張玉山、黄春茂、魏華、周武の6人が参加した。本展では西洋が抱いていた中国 の陶芸へのステレオタイプが徐々に変化してきていることが分かる。出品された作品はレバーグランデ美術館のコレクションとされた。 

周武 「青河」 2012年[15]                                                   李見深「青色记忆」2020年[16]

 2004年5月:中国陶芸家の伍時雄、夏徳武、王海晨、万里雅とオランダ陶芸家アドリアン・リース(Adriaan Rees)は、ヨーロッパ陶芸センターが企画した「荷・中国陶交流划(オランダ・中国陶芸交流プログラム)」に招待され、 「遥的国度(遥かな国・Country From Faraway)」と呼ばれるプロジェクトに参加し、3月間滞在制作した。 そして2006年、中央美術学院美術館に5人の滞在制作した作品が展示された。同年、景徳鎮陶磁学院陶芸センターにて「景徳鎮建鎮千年1004-2004国際陶芸交流展(景德千年1004―2004国交流展)」が開催され、30カ国以上から陶芸家が集まった。

 

 2005年10月:中国美術家協会と中国美術家協会陶芸委員会が主催し、西安美術学院が運営した「首届国家陶教育年会(第1回全国陶芸教育年会)」が西安美術学院で開かれた。同時に、楊志をはじめ、西安美術学院の教師たちは、新世代の陶芸家を宣伝メインとしてのウェブサイト「Xintao.com」を設立し、「中国陶新秀双年作品展(中国陶芸新世代ビエンナーレ)」の開催を成功に収めた。「Xintao.com」は新世代の陶芸家に焦点を当て、大学教員、在学生、若手陶芸家にとって重要なコミュニケーションエリアになっていた。 (2021年7月以降、サイトの閲覧が不可)

 2006年9月:現代美術家兼キュレーターの陳光輝が、現代陶芸のグループ展「不聚焦(ピントが合わない)」(上海双城現代手工芸美術館)をキュレーションし、現代陶芸の分野で活躍する陸斌、鄭、陳光輝、康青、黄春茂、万里雅、徐洪波、周武8人の作品が出展された。

陳光輝 「幽灵杜尚・泉・百年祭」パフォーマンス 2017年[17]

 10月には、東京藝術大学の島田文雄教授が主催し、清華大学美術学院で第1回「国陶瓷教育交流年会(国際陶磁教育交流年会)」(ISCAEE)が開催され、国内におけるおよそ40以上の大学の約200名の陶芸専攻の教員・学生がプロジェクトに参加した。

 

 2008年:中国の美術市場において最も権威のある「北京嘉德オークション会社」が国内で初の「当代陶瓷艺术春季拍卖专场(現代陶芸オークション)」を開催したことで、現代陶芸が美術市場に参入し始めた。

 同年、国連教育科学文化機関の国際陶芸協会が主催した「第43届国大会中外陶作品展(第43回国際陶芸会議・陶芸作品展)」が西安、及び富平の国際陶芸美術館で開催された。 (Wayne Higby,2009.1)

 

 2009年:中国国内の公募展で最も権威のある「全国美作品展(全国美術展)」の、「第11回全国美術展」の公募で初めて現代陶芸が作品形態の十種類うちの1つとして取り上げられた。

 

 2010年:スイス・ジュネーブの「セラミックトーク」が主催した展覧会「一千零一个杯碗(千一の杯と碗)」が広東美術館で開催された。本展は2009年にインドから始まり、中国の広東美術館が2番目の会場となり、その後は韓国、フランス、スイスなどに巡回した。金貞華などの多くの中国陶芸家が展覧会に入選された。 (金,2010.1)

「千一の杯と碗」展示風景 広東美術館 2010[18]

 2011年1月:上海多倫現代美術館は、「海市蜃楼――游牧的丝绸之路之实验(蜃気楼・遊牧的なシルクロード実験――国際現代陶芸展)」を開催した。本展に参加した中国陶芸家には、何鋭軍、黄春茂、金生花、康青、陸斌などが含まれた。(上海多术馆,2011.3)

「蜃気楼・遊牧的なシルクロード実験-国際現代陶芸展」展示風景 上海多倫現代美術館 2011.1[19]

文献の出版

 1980年代半以降、中国の主要な美術雑誌は『美』(『美術』)、『中国美术报中国美術報』(『中国美術報』)、『新美』(『新美術』)などの出版物を含め、現代陶芸に関する記事を少しずつ発表した。美術雑誌は、広大な中国国内を迷走する現代陶芸の状況を取り上げ、伝達する上で重要な役割を担ってきた。

 1989年に発刊した『江画刊』(『江蘇画刊』)は、当時の中国現代陶芸について多くの紹介記事を載せ、現代陶芸の研究を促進することに重要な役割を果たしてきた。また、中央工芸美術学院の学校誌『装』(『装飾』)も現代陶芸を積極的に紹介してきた。1992年、台湾の美術雑誌『陶』(『陶芸』)が創刊されると、周光真、陸斌などの著名な陶芸家が寄稿していた。この雑誌では中国本土の読者が多くいる。1996年に『雕塑』(『彫刻』)が「中国代陶家(中国現代陶芸家)」という現代陶芸のコラムを掲載し、1997年の『美文献』(『美術文献』)第10期が「中国現代陶芸」をテーマとして出版した。

 1998年以降、周光真の『今日美国陶泥家』(『今日のアメリカ陶芸家』)、白明の『世界代陶』(『世界現代陶芸概観』)・『世界著名陶家工作室』(『世界的に有名な陶芸家アトリエ』)・『中国今日陶』(『中国今日陶芸』)、品昌の『中国代陶』(『中国現代陶芸』)、左正の『超越泥性』(『土を超える』)など現代陶芸に関する著作が出版されている。なお、中国の現代陶芸は美術評論界に注目されると、美術批評家の皮道堅、杭間などが中国現代陶芸に関する学術的な見解と、圧倒的な批評の不足を語った。

周光真『今日のアメリカ陶芸家』[19]   白明『世界的に有名な陶芸家アトリエ・ヨーロッパ編』[20]

 2000年に中国陶磁工業協会と景徳鎮陶磁学院が編集した『中国陶瓷工』(『中国陶磁工業』)が追刊され、『中国陶』(『中国陶芸』)が発刊された。

 2002年1月に『湖南陶瓷』(『湖南陶磁』)、『陶瓷』(『陶磁』)、『陶瓷工程』(『陶磁工程』)から名前が変更された陶磁器雑誌は、最終的に『陶瓷科学与艺术』(『陶磁科学と芸術』)に定着した。同年、河北美術出版社編集長である田忠は『设计时代』(『デザインの時代』)という双書を出版した。その中の「陶瓷艺术设计(陶芸デザイン)」シリーズには、白磊の『超然自』、白明の『时间的声音』(『時の声』)、羅小平の『代广』(『タイムズスクエア』)など、現代陶芸に関するコラムが含まれている。

 2005年に中国美術家協会の陶芸委員会は、『中国陶家』(『中国陶芸家』)という中国の現代陶芸をメインとして紹介する学術誌を出版した。

 2010年に西人民出版社文化芸術報が主催する『中国陶瓷画刊』(『中国陶磁画刊』)が発行された。同年10月、中国軽工業研究所の『中国陶瓷――艺术版』(『中国陶磁芸術版』)の試用版が発行された。

現状と筆者の見解

 1980年代から2010年代までの30年余りの間に、中国での現代陶磁器の発展が急速に進んだことは容易に想像できる。 1980年代~90年代にかけて、中国の陶芸界は、85年の「第1回全国陶芸家ワークショップ」をはじめ、その期間に開催された学術会議は「現代陶芸」という概念に反応し始め、80年代半ばから中国の主要な美術専門誌に現代陶芸が取り上げられた。この10年は中国の現代陶芸の黎明期だと言えるだろう。90年代初頭、中国の現代陶芸に関する講演会や展覧会が人々の視野に入り、大学、芸術家集団、個人作家が、現代陶芸に対してそれぞれが興味を持ち始めた。それ以降、海外の美術館、大学、ギャラリーなどの国際舞台まで中国の現代陶芸が広がった。過去の美術雑誌に散らばっていた現代陶芸の記事は、読みやすいように現在『中国陶芸家』などの専門誌にまとめられてる。 40年間の変遷とともに、中国の現代陶芸は、世界現代陶芸界において存在感を増している。

中国現代陶芸に関する情報が揃えた専門誌『中国陶芸家』2021.1[21]

 もちろん、中国の現代陶芸が発展する過程において、まだ改善すべきところが多く存在してる。筆者は個人的な経験に基づいて以下の見解を述べる。

まず、中国での現代陶芸に対する認識は一面的なものであり、陶芸家の中には、素材にこだわらずコンセプトの重要性を強調する作品は、陶芸制作ではなく現代アートだと信じている人も多い。このような状況は、中国における伝統文化の伝承システムにも関係している。伝承システムの核となるのは、基礎的な技術を鍛えるものである。中国絵、書道などの中国伝統芸術に対する認識としては、制作の質は作家の技術面に決まられる。したがって、陶磁器の領域には地域的な文化伝承が注目されている。驚くべきことに、同じ地域の作家は、素材から制作工程、美意識までが一致し、つまり工芸的な面で制作の価値を判断するのが一般的である。しかし、国内で現代陶芸が陶芸制作の一種になると、集団主義から個人主義へのトレンドが盛り上がりを見せてきた。陶磁器における素材と工芸のユニークな魅力により、あらゆるアーティストが素材を介してコンセプトを表現し、陶芸を通して自分に向き合い、示唆することができるようになった。

Cosmas Ballis、Iskra Ivanova、寄神宗美などの陶芸家が上虞青現代国際陶芸センターで滞在制作[22]

 また、中国の現代陶芸には独自の文化に基づく学術的文脈がないということに比べ、欧米では多様な文脈で発展していることがわかる。例えば、上記のアメリカ西海岸陶芸運動の提唱者であるピーター・ウォーカーズの学生ジョン・メイソン(John Mason、1927-2019)は、ピーターの作品とはまったく異なるスタイルを持っている。オーティス・クレイ革命は、個人的な感情の追求を主張したが、ジョン・メイソンは逆に主観的な表現を放棄し、ミニマリズム陶芸を提唱した。また、1960年代のポップアートの台頭は陶芸家ロバート・アーネスン(Robert Arneson、1930-1992)にショックを与え、彼は比喩的な醜い陶器の彫刻を通して芸術の商業化を風刺した。その後、彼が主張したファンクアートムーブメント(Funk Art Movement)は、アート界に大きく影響した。一方、中国の現代陶芸の潮流は、挑戦や革新なしに、ほとんど欧米の理論に従っている。中国の現代陶芸は中国に根ざし、地域化を発展させるという見方が普遍的に認識されているが、しかし制作はつい伝統工芸的な面に陥り、現代陶芸におけるコンセプトの重要性と自由な表現力への意識が足りない場合が多い。中国の現代陶芸家は、独自の文化的特徴を維持しつつ、「過去への追想と現在への感傷」を捨て、現代社会に反応して大胆な試みを実践する必要がある。

【引用・参考文献】

周光真 (2010.10)『当代陶艺鉴赏与收藏』江出版社
胡宇、徐、刘芷瑜、李嘉琦 (2017.10)「佛山石湾当代陶艺发展研究」『佛山陶瓷』 佛山陶瓷志社
永善 (1989.3) p3-5 「展中国代陶的研――香港『中国传统代陶会』随」『装』 中国装饰杂志社
(2014.7)「1989“中国艺术大展“研究」『大学与美术馆』第五期 美术馆艺术写 中国青年出版社
先之 (1995.3)「95景德高岭国侧记」『中国陶瓷工』中国陶瓷工业杂志社
左正 (1999.3)「左正作品」『装』中国装饰杂志社
小平 (1999.2)「听泥土的声音――98中国宜兴国会述」『装』中国装饰杂志社
小婧 (2019.6)『十届(1998-2016)“中国当代青年陶家作品双年展”管』修士論文
陶逸 (2000.6)「回与未来――清大学2000年国交流展述」『装』中国装饰杂志社
Wayne Higby (2009.1)「第43届国学会大会在西安召开 空·化」『中国陶家』江苏凤凰美出版社
贞华 (2010.1)「10×8厘米的世界――一千零一只杯碗巡回陶展」『中国陶家』江苏凤凰美出版社
上海多术馆 (2011.3)「海市蜃楼――游牧的丝绸之路实验(国当代陶展)」『世界知艺术视界)』世界知出版社
(2003.1)「焉不的中国“代陶”――90年代以来中国代陶现实问题」『文研究』文研究志社

【画像の出典元】

[1] 周光真『当代陶艺鉴赏与收藏(近現代陶芸鑑賞とコレクション)』表紙

[2]・[3] 創價藝文 吾土純形-李茂宗巡迴展
https://www.sokaculture.org.tw/exhibition/吾土純形-李茂宗巡迴展(2022年5月15日 閲覧)

[4] 富平陶村旅游景点介
https://www.77quyou.com/html/jingdianjieshao/sanxi/8807.html(2022年5月15日 閲覧)

[5] 富平陶博物
https://www.meipian.cn/2maii08k(2022年5月15日 閲覧)

[6] 景德镇乐天陶社 天陶社宣
https://www.bilibili.com/video/BV1KE411L7So?spm_id_from=333.337.search-card.all.click(2022年5月15 閲覧)

[7] 中国文化――冰公社首次触网拍
http://www.cflac.org.cn/yscj/pc/201304/t20130423_184576.html(2022年5月19日 閲覧)

[8]・[9]中国文化――冰公社:关注陶的泥性、火性与人性
http://art.people.com.cn/n/2014/0217/c206244-24378455.html(2022年5月19日 閲覧)

[10] 中国工――梅文鼎
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1714666796159432702&wfr=spider&for=pc(2022年5月20日 閲覧)

[11] 広東美術館『感受泥性(土を感じる)――現代陶芸招待展』表紙

[12] 陶溪川 迁徙泥性――2019中国当代陶
http://www.taoxichuan.com/exhib_detail/1229.html(2022年5月15日 閲覧)

[13]・[14] 中国美学院 泥土・土――第十二届中国当代青年陶家作品双年展
https://m.thepaper.cn/newsDetail_forward_14137477(2022年5月15日 閲覧)

[15] 中国瓷网――周武:手的启示
http://www.zhongguociwang.com/show.aspx?id=15307&cid=231(2022年5月19日 閲覧)

[16] 湖北省美院“开枝散叶――从湖北省美院走出的艺术家群体研究展”艺术家·李
http://wlt.hubei.gov.cn/hbsmsy/msg/zltj/202111/t20211119_3871309.shtml(2022年5月19日 閲覧)

[17] :打破杜尚100年的“成品”艺术
http://www.360doc.com/content/21/0313/19/74209580_966814479.shtml(2022年5月19日 閲覧)

[18] 雅昌展 “一千零一个茶杯”当代国
http://exhibit.artron.net/zlbig.php?zlid=9734&p=2(2022年5月15日 閲覧)

[19] 雅昌艺术华东站 海市蜃楼――游牧的丝绸之路实验当代陶展亮相上海
https://news.artron.net/20110220/n151804_.html(2022年5月15日 閲覧)

[20] 周光真『今日美国陶泥家(今日のアメリカ陶芸家)』表紙

[21] 白明『世界著名陶家工作室欧洲(世界的に有名な陶芸家アトリエ・ヨーロッパ編)』表紙

[22] 『中国陶家(中国陶芸家)』2021.1表紙

[23] 上虞青代国中心――入驻创
http://www.shangyuceladon.com/activity.aspx?id=40(2022年5月15日 閲覧)