KOGEI-netメンバーの菊池裕子による展覧会評「身体感覚を研ぎ澄ますという静かな抵抗。菊池裕子評『身体と物質のエスノグラフィー 加速社会における遅さと深さ』展」が、2026年8月26日、『美術手帖』ウェブ版に掲載されました。
本稿では、第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の開催期間にあわせてヴェネチアで開催されているGO FOR KOGEIの展覧会「身体と物質のエスノグラフィー 加速社会における遅さと深さ」を取り上げています。
会場となるのは、リアルト橋近くに位置する15世紀の歴史的建築 Palazzo Pisani Santa Marina。秋元雄史氏の企画のもと、コムロタカヒロ、桑田卓郎、綿結、牟田陽日、川井雄仁、三嶋りつ惠、沖潤子、シゲ・フジシロ、舘鼻則孝、中田真裕の10名の作家による約100点の作品が展示されています。
菊池は、個々の作品や素材、制作技法を詳細に読み解きながら、工芸を近代的な「美術/工芸」という枠組みだけで捉えるのではなく、身体、物質、装飾、時間、ジェンダー、植民地主義、地域性とグローバルな文化状況など、複数の視点が交差する領域として論じています。
とりわけ本稿を通底するのは、「つくる」という行為に含まれる身体性と時間へのまなざしです。
彫る、編む、吹く、刺す、結ぶ、塗る、重ねる――。工芸におけるこうした身体的行為と、その反復によって蓄積される時間を、効率や速度を求め続ける現代社会とは異なる価値体系として捉えています。
また、ファイバー、陶、ガラス、漆、ビーズ、組紐など、それぞれの素材が持つ歴史的・社会的背景にも目を向けながら、日本の工芸を国際的な現代美術の言説のなかでどのように位置づけることができるのかを考察しています。
ヴェネチア・ビエンナーレという国際的な場を起点に、工芸における「遅さ」や「深さ」、身体と物質の関係をあらためて問い直す論考です。
掲載情報
身体感覚を研ぎ澄ますという静かな抵抗。
菊池裕子評「身体と物質のエスノグラフィー 加速社会における遅さと深さ」展
文:菊池裕子
掲載:美術手帖
公開:2026年8月26日
記事はこちら
https://bijutsutecho.com/magazine/review/32939
展覧会情報
身体と物質のエスノグラフィー 加速社会における遅さと深さ
会期:2026年5月9日(土)– 11月22日(日)
会場:Palazzo Pisani Santa Marina, Venezia
企画:秋元雄史(GO FOR KOGEI アーティスティック・ディレクター)
休館日:火曜日